南方書店

私が本屋したらこんな本を置いておきたい…たまに雑な記事も書きたい。そんな架空書店です。

影の現象学/河合隼雄/講談社学術文庫

 何年ぶりかにまともな本を買ったなあというのが素直な感想で。
中盤あたりまで読みふけってると、だんだんもっと2,3歩ぶっこんで欲しいと思うようになり、それではこの一般向けの一般論がファンタジーを帯びて読者が離れてしまうじゃないか…南方学のように・・・・・・・・・・ここでふと、これ講談社学術文庫さんなのにぶっ飛んでないわけないじゃないかと思い始め。そういやこの何年か普通な本読んだためしがないので、そうだしばらく本を読むまいと、そのまま1週間くらい本は読まないようにして読み直しましたが、確かにぶっ飛んでる。

 

 ア〇ルに鉛筆入れだした下りでも真顔で読んでたけど、そういや普通じゃないかと本休憩したおかげでギリギリ感知できるようになりました。
 古代の影の性質から、現代での影に対する認識。夢の中で対峙する影の脅威についての研究。ユング派の著者による見解が”影とは一体何なのか?”という結論までうまく導き出されています。影と民話や神話の関係性その他著名な作品に潜む影の役割が一つ一つピックアップされ最後まで面白くてさらっと読める感じです。私的には後半の異様な面白さが気に入ってます。

 

 この本のカテゴリ分けを考えたとき、真っ先に心理学だなと思ってたのですが読み耽る内に民俗学でもいんじゃないのかとも思い始め、内容的には翁の予見していた変態心理学の良い研究結果とも言えるような気もしつつ、あとがきを読んだら作者も心理学にしたかったうまが書いてあったのでカテゴリ分けを心理学にしています。

 

 見ものだったのは、解説に遠藤周作を起用していることです。私にとって遠藤周作=エッセイ名人の認識の為、ガッツポーズせざるを得ない気分になりました。一時期文章の上手い人のエッセイを読むのがマイブームだった頃に遠藤周作のエッセイを読んでたので大好物となっていたのですが、まさかこの本で再会するとは思いませんでした。遠藤周作のこの本に対する解説は一つの小作品のように完成され、1冊で2つの作品が読めた気分です。

 

 

 

 

 

影の現象学 (講談社学術文庫)

影の現象学 (講談社学術文庫)